40年のあゆみ

  • ものづくり・製造業の世界で働くこと40年
  • 岡山での修行から「新しいモノをつくる」ことへの興味を確信
  • 東京での修行を通し新規事業を収益事業にしていく過程を体験
  • 民間、行政双方での視点から現場の課題の発見と解決策を推進
  • 方策、人材、資金を経営計画に落とし込み、事業成長を後押し

20歳〜:瀬戸大橋の基礎設計を通してものづくりの心を養う

20歳、大分高専を卒業間近の私に担任の先生が声をかけてくれました。

「鶴崎海陸運輸が技術屋を入れたいそうだ。上杉、行ってみないか?」

私は入社して間もなく、岡山県玉野市へ出向することになります。

2年間の出向期間は、瀬戸大橋を作る巨大プロジェクト期間に重なりました。

そして複数あるプロジェクトの中の一つで、基礎設計の仕事に携わるチャンスを得たのです。

「形に残るものをつくりたい!」と強烈な想いに駆られた私は3、4日寝ずに夢中で設計しました。

この経験こそが、私の中に「新しいモノをつくる」ことへの確かな興味が宿った原体験となりました

こぼれ話

瀬戸大橋の設計の仕事で「プロジェクトX」に出ました。あれから30余年、来年こそは渦潮を見に設計した橋を渡ってみたいと思っています。

2017年にかみさんとサンフラワーで四国、関西旅行をした時に船の中から撮影。明石海峡大橋も瀬戸大橋の一つです。

22歳〜:やりがいと既存事業の傾き

出向を経て大分に帰ってくると、三井造船大分事業所内で大きなプロジェクトがちょうど始まるというタイミング。

自分の経験が活かせ、とてもやりがいを覚えました。

しかし程なくして、競合参入などにより徐々にプロジェクトが縮小していき、会社も舵を大きく切らざるを得ない状況となりました。

「新しいモノを作れ」

会社の号令で、700人中4人の選抜メンバーに抜擢された私は、会社の存続をかけ必死に日本全国を行脚しました。

視察先で見つけた“新事業の種”を、上司とともに事業計画書にまとめて社長に報告。

これが私たち選抜メンバーに毎月課せられた任務でした。

新事業の可能性をどうすれば人に伝え、動かすことができるのかを考える日々。

今思えばこの時、自分の中に人を導く法則みたいなものが育てられたように思います。

22歳〜:2年間の東京修業を経て大分での新規事業の芽を見つける

そうした中でついに、“新事業の芽”が見つかります。

「上杉、東京に行け!」

その一言で、私は東京の日本システムハウスという会社に向かい、3.5インチフロッピーディスク開発のプロジェクトに参加することに。

約2年間の開発を経て大分に帰ってきた私は、選抜メンバー4人で新規事業への挑戦を始めました。

東京での修行を経て気づいたのは、当時の大分には“精密で緻密な板金加工ができる工場がない”ことでした。

そして、技術的に「ウチならできる!」ということにも気づきました。

長い出向・修行期間の中で、いわゆる「SWOT分析」に近いことができるようになっていたのです。

SWOT分析(スウォット分析)とは
自社の状況を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素で整理して分析するフレームワークのこと。SWOT分析により、事業戦略方針を明確にできる、事業計画書に説得力が生まれるなどとされています。
当時開発していたフロッピーディスクの写真は残念ながら残っていませんでしたが、上記と同等の物を開発していました。

24歳〜:不良品を抱え、東京と大分を往復する日々

早速、社内板金工場を立ち上げて作り始めたものの、当初はひどいものでした。

一言で言うなら、不良品の山。10個作って、1個商品になれば良い方。

4人もの社員のリソースを割きながら、売上は月に100万〜200万円程度にしかなりませんでした。

このままではダメだと悟った私は、作った製品を東京の修行先に見てもらうことに。

しかし、そこでもらったのは厳しい一言でした。

「お前、ウチで設計を学んだわりに、こんな物しか作れないのか」

パッと見問題がなくても、何度か動かすと溶接部分がポロッと落ちる、そんな品質レベルを見抜かれていたのです

製造装置の製品在庫品、板金部品。

25歳〜:不良品の山から月間売上1,000万円の収益事業へ

製品ともらった助言を持って帰り、改善。そして翌月また東京へ持っていく。

するとまた、自分たちが見えていなかった視点を指摘される。

「くそー」と思ってまた改善を繰り返すうちに、目が肥え、客観的に物を見られるようになっていきました。

そんな生活を1年続けた頃、売上と利益がつながってくるようになり、ついに月100台、売上1,000万円を達成。

「よく頑張った」東京の師匠が放った一言が、本当に嬉しかったです。

振り返ればこの時に「PDCA」を身をもって経験したことが、私の今の仕事に大きく生きています。

こぼれ話

当時は作った製品を風呂敷に包んで飛行機に乗り、東京に持って行っていました。風呂敷を抱え「これは俺だけが作ったわけじゃない。曲げてくれた人、溶接してくれた人。大事に持って行かなきゃならない」と思った時、物理的な重さ以上にモノの重さ、大切さを感じたことを今でも覚えています。

東京と大分の往復時期の宿泊先の某ホテル内で。ようやく仕事がうまくいき、思わず喜びのピース。

35歳〜:30年の経験を次世代へ。新しい世界への旅立ち

板金工場での実績を重ねると大分県、大分市の知るところとなり、優良企業に認定されました。

すると視察がたくさんくるようになり、メディア戦略の重要性にも気づきます。

こうして工場長として計画策定やマネジメントの仕事を重ねて行く中で50歳を迎え、人生の折り返し地点と考えた時に、

・これまでの30年の経験を活かせないか?

・これまでの自分の経験を、まだ経験していない人に伝授したい。

という思いが芽生えるようになりました。

それから程なくして母親が倒れ、仕事と介護との二足の草鞋は難しいと感じていたところに、「大分県工業連合会が発足される」という話が耳に入ります。

「1からの立ち上げなので、上杉さんに向いているのでは?」

周りからの声に背中を押され、面接を受けたところ合格。

急に会社を辞めることになり、部下に申し訳ないと思いながら自分の人生だと思って飛び込んだのです。

大分県工業連合会として主催した「製造業のための知的財産戦略セミナー」。多くの企業に参加いただいた。

50歳〜:行政からみたものづくり現場の課題と可能性

大分県工業連合会に入って、私は驚くべき経験をします。

「ものづくりの現場→行政」の立場で見ていた物事が、「行政→ものづくりの現場」の立場で見ると全く違う景色に見えたのです。

ものづくりの現場の代表として会社員時代の自分が出した資料、頂いた補助金はどういう流れで動くのか。

大分のものづくり企業が抱える課題が想像以上に山積みなこと。

そして現場、行政と立場の違いによる問題点も深く理解することができました。

一方で、解決の方法はたった一つ「現場力」であることも改めてわかりました。

現場力と言っても、必ずしも高度な技術力や生産能力のことではありません。

「3S」「5S」をしっかりすること。本当にここからなんです。

若い頃、よく上司に「お客様が来るから、トイレを綺麗にしろ」、「トイレには神様がいるんだよ。トイレを(設備として)綺麗にしても、常に清潔にしておかないと意味がない」と言われてきました。

当時はなんとなくわかったような気でいましたが、今思うとそうしたことを教えてくれた上司に恵まれていたと思います。

そして私は、大分県のものづくり・製造業に「5S」を徹底する機運を醸成していこうと考えました。

「5S」とは
5S:整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)
製造業などの現場で、安全や生産性の向上、職場環境の整備などを目的として掲げられるスローガンのこと。
2017年度大分県工業連合会定時総会時での一コマ。前年度の活動事例発表を皆さんの前で発表した

51歳〜:約2,500社を訪問して見えた共通課題と各々の解決策

任期5年でほぼ全社回りました。

半導体、自動車、鉄鋼、建設、製缶、食品加工…

様々な業種業態がありましたが、中に入って一緒に見ることで、課題には共通点があることもわかりました。

時に業種ごとの企業データを資料としてまとめ県内外の企業への販促ツールとしたり、新規事業の運転資金の一部に補助金を活用することを提案したり。

その時、その企業に必要な方策を考え、必要な人材、資金を具体的な計画に落とし込み、一緒になって事業を展開していくことが私の役割だと気づきました。

大分県工業連合会所属の2,500社を毎日2〜3社ずつ訪問。

57歳〜:ものづくり・製造業の事業成長の道筋を作っていく

2016〜2017年度には台湾企業と大分県のものづくり企業とのコラボ展開が盛んに。商談会企画運営やスケジューリングを特命で行った。台湾のものづくり企業とは今でも友好的に交流を進めている。

大分県内の企業はもちろんですが、日本のものづくり・製造業の技術力、品質の高さは今でも世界に誇れるものだと思っています。

ただしその優れた技術力、品質をどう活かせるかは、世界情勢、社会のニーズ、競合の強さによって変わってきます。

そうした大局を見据えた上で、現場に落とし込む。この一連の道筋を共に作り、事業を成長させていくことが私の仕事です。

「上杉さんに相談したら突破口が見つかった!」

「上杉さんのところに行ったら色々なつながりができた」

「上杉さんと話をしたから、こういうことが実現できたな」

そんな一言を頂いた瞬間が、幸せを感じる時です。

おおいたサテライトオフィス 代表取締役 上杉照明

資格(一部抜粋)

・大分県産業創造機構(経営アドバイザー、技術アドバイザー)

・おおいた宇宙関連産業チャレンジ支援事業 コーディネータ

・大分県発明協会 知財戦略コーディネータ

・知的財産管理技能検定3級

・実用英語検定2級

実績(一部抜粋)

・ものづくり補助金:依頼35件中30件採択、総額4億5,000万円(2013〜2017年30)。その後2018〜2022年まで7社採択、総額9,000万円。

・地域資源補助金:依頼4社中4社採択

・文部科学省「創意工夫功労者賞」:申請に伴う助言依頼は、申請対象企業26社32件

・知的財産権:取得支援依頼5社中5社取得、現在数社申請中

・支援企業数:補助金、助成金等支援企業40社(2013年〜2017年)。起業後の支援企業数10数社(2020〜現在)。

論文

・難削材ポケット加工用CAMシステムの開発研究(大分県産業科学技術センターとの共同研究)

・各種熱源を利用した余熱撹はん接合法の開発(熊本大学との共同研究)

座右の銘

精神一到何事か成らざらん

やると心に誓って物事にあたれば、どんなことでも出来ないことはない。精神力があれば、道は開けてくる。 “あきらめずに努力すれば必ず希望が見えてくる”

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